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戦争に行ったクマさんのお話
〜Wojtek〜

第二次世界大戦中に、一頭のヒグマがポーランド陸軍の兵隊として戦争に参加していたことをご存じですか?彼の名は「ヴォイテク」。ポーランド陸軍の兵士たちと共に暮らした彼は、人間と同じものを飲んだり食べたりして、まるで人間のような生活を送っていたと言われています。まるで絵本のお話のようですが、ポーランドで知らない人はいないほど有名な実話です。

生まれてすぐに親を亡くしイランに住んでいた少年によって発見され保護されたヴォイテクは、食料と引き換えにポーランド人に譲渡され、1942年から5年間、「ポーランド第2軍団」の兵隊として働きました。5年間にわたり兵隊たちと寝食を共にしたヴォイテクは、ビールを飲みながら兵士たちの歌に合わせて歌ったり踊ったり、兵士たちの冗談に対して声を出して笑ったりと、まるで人間ような生活を送っていたと言われています。また、兵士たちの話すポーランド語を完全に理解し、兵士としても「伍長」という階級に恥じぬ活躍をしたそうです。当時を知る者の間には「ヴォイテクが兵隊に交じって弾薬の運搬作業に協力していた」という証言もあり、その姿は現在もポーランド第22中隊の公式シンボルとなっています。

兵士としての任務を終えたヴォイテクは、スコットランドのエディンバラ動物園へ引き渡され、22歳でこの世を去りました。動物園へ引き渡された後も、ヴォイテクはポーランド兵士たちと楽しく過ごした日々の記憶を忘れることはありませんでした。その証拠に、ポーランドの有名な軍歌を聞くと、ヴォイテクは寂しさと喜びの入り混じった大きな声を出して立ち上がり、体を大きく揺らして踊っているようなしぐさを見せたと言います。きっとポーランド兵士たちとの楽しい時間を思い出していたのでしょう。その姿を想像しただけで、胸が熱くなります。

今から実に70年以上も昔の出来事ですが、その人気からヴォイテクについての記録は多く残されており、彼が兵士たちと遊ぶ様子などを実際の写真や映像で見ることができます。ポーランドだけでなくスコットランドでも、ヴォイテクの人気は衰えることはなく、スコットランド・ポーランド文化協会の名誉会員にも選ばれました。インターネットで検索してみると多くの写真や文献に触れることができますので、是非「ヴォイテク」で検索してみてください。

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