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Salon International de la Lingerie 2024
ランジェリーの未来を紡ぐ

年に一度、毎年フランスのパリで開催される世界最大のランジェリー国際見本市「Salon International de la Lingerie 2024」は、今年で60周年を迎え、ランジェリー業界の最前線に立つイベントとして、また一つ歴史に名を刻みました。パリのポルテ・ド・ヴェルサイユ展示会場に足を踏み入れた瞬間から、革新的なデザイン、持続可能性への新しい取り組み、そして世界各国から集まったクリエイターたちの情熱に触れることができる特別なイベント。昨年よりもより開放的になった各ブースでは、来場者が製品をより気軽に見ることができるようになりました。

目次 -Contents

Salon International de la Lingerieとは?

毎年パリで開催される「Salon International de la Lingerie」は、世界最大のランジェリー国際見本市。ランジェリー業界の革新性と多様性を象徴するイベントとして、世界中から注目を集めるこの展示会には、老舗の有名ブランドからニューフェイスブランドまで、世界中のランジェリーブランドが一堂に集まります。

パリのポルテ・ド・ヴェルサイユ展示会場
パリのポルテ・ド・ヴェルサイユ展示会場

開催60年目を迎えた2024年は、エコフレンドリーな素材の使用によるサステナビリティへの新たな取り組み、デジタル技術とテクノロジーを駆使した顧客体験の向上、さらには自己表現を可能にするデザインの多様化などが、特に重要なテーマとして取り上げられました。これらのトピックは、新旧さまざまなブランドがランジェリー業界の未来をどのように形作っていくのか、革新的なアイデアとトレンドを提起するもので、日本のファッションとランジェリー業界にも新鮮な風を吹き込むインスピレーションとなりました。

Salon International de la Lingerie
Salon International de la Lingerie

今回、特に印象的だったのは、新進ブランドと確立された名門が融合し、ランジェリーをただの下着ではなく、自己表現の一形態として捉え直す動きです。ランジェリーがファッション業界内でどのように進化しているか、そしてそれが私たちの生活や価値観にどのように影響を与えているか、このイベントを通じて見えてきた「ランジェリー業界の未来」を深く探っていきましょう。

伝統的ランジェリーブランドの最新動向

Salon International de la Lingerieには、Simone Pérèle(シモーヌ・ぺレール)、Lise Charmel(リズシャルメル)、Aubade(オーバドゥ)など、ランジェリーの歴史と伝統を築き、守り続けてきた伝統的なブランドも多く出展しています。これらの伝統的ランジェリーブランドが、現代のランジェリー業界にどのように影響を与えているのか、その歴史と進化を掘り下げてみましょう。

Simone Pérèle(シモーヌ・ぺレール)
Simone Pérèle(シモーヌ・ぺレール)

Simone Pérèle(シモーヌ・ぺレール)は、1948年の創業以来、ランジェリー業界における歴史と伝統の象徴となっています。75年以上にわたり女性の美しさと快適さを追求してきました。今年のSalon International de la Lingerieでは、ブランドが守り続けてきた伝統と革新性を組み合わせたコレクション「Intrigue」ラインを発表。エレガンスと洗練されたデザインは維持しつつ、現代女性の多様なニーズに応えるアイテムを提案しました。またデジタル化を推進し、店舗とオンラインを統合。新カテゴリーの開発にも注力し、ブランド革新を進めています。このような取り組みを通じて、シモーヌ・ぺレールは伝統を守りながらも、ランジェリー業界の進化に貢献し続けています。

Lise Charmel(リズシャルメル)は、リズシャルメルlのアイデンティティの核とも言える自然をモチーフとした刺繍を基にしたコレクションを今年も多く発表しました。一方で、それらのコレクションからはシーズンに関係なく楽しめるコレクション戦略へシフトする姿勢も感じられました。リズシャルメルは、長年築き上げてきたブランドの伝統の花柄刺繍という得意分野を維持しつつ、定番と革新を組み合わせたアプローチを両軸で強化することにより、今後はより市場のニーズに合わせた柔軟な展開戦略を展開していくことでしょう。

Aubade(オーバドゥ) × Cindy Bruna(シンディ・ブルーナ)
Aubade(オーバドゥ) × Cindy Bruna(シンディ・ブルーナ)

Aubade(オーバドゥ)は、毎年様々なコラボレーションを通じて、ランジェリー業界に新しい風を吹き込んでいます。昨年末に発表されたCindy Bruna(シンディ・ブルーナ)とのコラボレーションは、特に注目を集めました。シンディ・ブルーナは、イヴ・サンローラン ビューティー、シャネルの香水の広告に起用され、ヴィクトリアズ・シークレットのランウェイを飾るなど、世界的にも有名なトップモデルですが、ドメスティック・バイオレンスの被害者を支援する女性支援ネットワーク「Solidarité Femmes」のアンバサダーも務めており、フォーブスの「30歳以下の30人」リストにも選ばれています。社会に対して強いメッセージ性を有するトップモデルとのコラボを実現したことによって、Aubadeはブランドとして持つ革新性とクリエイティビティを強調することに成功しました。

新進ブランドによるイノベーション動向

伝統と革新を融合させる動向が目立つ伝統的ランジェリーブランドに対して、新進のニューフェイスブランドはどのようなアプローチをしているのでしょうか。ここでは、クラウドファンディングプラットフォームを通じて資金を集めた新進ブランドから見えた動向をご紹介します。

フランス最大規模のクラウドファンディングプラットフォームUlule(ウルル)は、サステナビリティや革新的なアプローチを特徴とするファッション業界のスタートアップやプロジェクトに焦点を当てています。Salon International de la Lingerieに出展したNoumi Swim、My Joy、Bad Biche Lingerieなどの新進ブランドは、いずれもUlule(ウルル)を通じて資金を集めた点において共通しています。これらのブランドがSalon International de la Lingerieに出展したという事実は、ランジェリー業界の未来の方向性を示唆しているとも言えるでしょう。

スイムウェアブランド「Noumi Swim」は、リサイクル素材を用いた水着を展開しており、ランジェリーブランド「Bad Biche Lingerie」は、あらゆる体型や性別に対応するデザインのランジェリーを多く展開していました。ショーツを主力商品とするブランド「My Joy」は、革新的なデザインと衛生的で快適な保護機能を両立した画期的な製品を発表するなど、いずれもサステナビリティ、多様性、インティメイトヘルスへの関心を高める商品が目立ちました。ランジェリーブランドによるこれらのアプローチは、直面する現代の課題に対応し、消費者の変化するニーズに応えようとする姿勢の表れだと言えます。

新しいブランドも様々な方法で出店している
新しいブランドも様々な方法で出店している

これらのブランドがSalon International de la Lingerieのような世界的イベントで成果を展示することは、社会を変える大きな一歩ともなり得る貴重な機会です。環境に配慮した素材の使用、すべての体型に対応するデザイン、女性の健康とウェルビーイングを重視する製品など、ランジェリー業界には今後ますます新しい風が吹き込まれることでしょう。

ランジェリーによる自己表現とエンパワメント

イベント期間中には様々なセミナーやワークショップも開催されます。インタビューセッション「Terres intimes」では、フランスで心理療法士として活躍しポッドキャスターでもあるジュリエット・セルベラ氏が、自己愛や自信、性に対するランジェリーの影響について、様々なゲストと対談して注目を集めました。

ジュリエット・セルベラ氏のインタビューセッション
ジュリエット・セルベラ氏のインタビューセッション

このワークショップでは、ランジェリーが個人の自己表現とエンパワメントにどう貢献しているかがテーマになりました。ランジェリーが内面的な美しさと外面的な自信を引き出す手段であること、さらに性教育や世界との関係性におけるその役割が議論されたのです。

参加者たちは、ランジェリーに関する個人的な見解や経験を共有し、「男性のランジェリー」や「性とポルノについて」「産後、月経周期」「親密な健康とセクシャリティ」など、ランジェリーにおける自己表現の多様性と包括性の重要性について、様々な価値観を交わし合いました。

ランジェリーに関する公開討論は、性とウェルビーイングへの意識を高める機会を提供し、ランジェリーが個人のアイデンティティと深く結びついていることを浮き彫りにしました。Salon International de la Lingerieのオフィシャルサイトでは、Terres Intimesのライブ録音エピソードも公開されています。

世界も注目する日本のランジェリー美学

日本生まれのランジェリーブランドSOEUR TOKYO(スールトーキョー)とAROMATIQUE(アロマティーク)をご存知でしょうか。どちらもSalon International de la Lingerie初出展のブランドで、Salon International de la LingerieオフシャルサイトではExposed Brands(注目のブランド)として紹介されました。その創造性と独自性が国際的な舞台で認められ、スタイルコードを再解釈する創造的なブランドとして注目されたことは、日本のランジェリー業界の未来にとって明るい話題です。

SOEUR TOKYOは、ランジェリーでもない衣服でもない”overwear”という新境地のニューカテゴリを開拓し、創造物としてのコレクションを提案する、世界が最も注目する日本のランジェリーブランドのひとつです。世界のみならず日本のランジェリー市場においても独自のポジションを築いています。

日本のランジェリーブランドSOEUR TOKYO(スールトーキョー)とAROMATIQUE(アロマティーク)
日本のランジェリーブランド(2024AWから)、SOEUR TOKYOとAROMATIQUE

AROMATIQUEもまた、そのユニークなコンセプトと高品質な素材で注目を集めました。創業は1930年と古く新進ブランドではありませんが、素材の選定から縫製まで全ての工程を自社独自の手法で取り組む選別眼と技術力を誇っています。日本の確かな技術により生み出されるランジェリーが世界に通用するということを、AROMATIQUEは証明したのです。

これら2ブランド以外にもSalon International de la Lingerieに日本のランジェリーブランドも出店しており、これは日本のランジェリーブランドの世界市場における存在感がますます大きくなってきたことを意味しています。グローバルなファッション業界において日本のランジェリーが重要な役割を果たす、そんな未来が訪れる日はそう遠くないでしょう。

ランジェリー業界が描く未来への展望

3日間にわたり開催されたSalon International de la Lingerie 2024は、例年以上にランジェリー業界の新たなスタートを感じさせるイベントとなりました。

ランジェリー業界の明るい未来
ランジェリー業界の明るい未来

サステナビリティ、ジェンダー、ファッションという一貫したテーマで結びついた今回のイベントは、ファッションとランジェリーの境界線がもはや存在しなくなっているという事実を、ランジェリー業界のみならず、ファッション業界全体に対して、強いメッセージとして発信するものでした。参加者たちは、ランジェリーの最新トレンド、持続可能性への新しい取り組み、そして業界をリードするブランドやデザイナーたちの情熱に触れ、ランジェリー業界の明るい未来を描くことができたに違いありません。

ランジェリーが単なる下着ではなく、それ以上のもの、つまりファッション業界における主要なカテゴリーとしての地位を確立しつつあること。ランジェリーとファッションが融合した新しいカテゴリが存在していること。さらに、その先にある未来の方向性が示されたことで、ランジェリー業界は未来に向けてまた大きな一歩を踏み出しました。Salon International de la Lingerie の今後にも期待が高まりますね。

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