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ランジェリーをあなたの日常スタイルに
その道のプロから学ぶスタイルコラム

Lingerie Stylist

ランジェリー女子ができるまで

さき yoshitake ランジェリー女子ができるまで

ランジェリーの奥深さを教えてくれた、2つのこと

こんにちは。
ランジェリーを愛してやまないランジェリースタイリストのさきです。

前回のコラムでは下着屋でのアルバイト時代について書きました。今回はその続きで、私のランジェリーに対する見方を大きく変えた2つの出来事についてお話します。最後まで読んでいただけたら嬉しいです。


ランジェリー愛に翻弄された就職活動

下着屋でのアルバイトをしながら学生時代を満喫していた私ですが、大学3年生の夏からいよいよ就職活動を始めることになりました。大学に入学した当時はウエディングプランナーを志していたこともあり、ウエディング関係の仕事やアパレル、ジュエリー関係の仕事などさまざまな業界の説明会などに参加したのですが、下着屋でのアルバイトを重ねていくうちに、やはりランジェリーに対する想いがどんどん募っていき、「ランジェリーに関わるお仕事に就いてみたい」という気持ちが強くなっていきました。

さき yoshitake・ランジェリーの奥深さを教えてくれた、2つのこと

下着の会社といえば最初に思い付く会社は、やはりWACOALです。私の心を揺れ動かした、あのsaluteを産み出してくれた会社。そこでランジェリーに関わるお仕事ができ、更にsaluteというブランドを背負って働くことができたらなんて幸せだろう…なんて妄想しながら、県外まで会社説明会を聞きに行きました。1時間ほどの説明会でしたが、WACOALの取り組みやお仕事の内容にとても惹かれたことを今でも覚えています。説明会の後は興奮がおさまらず、大学の友人に説明会で聞いた内容を興奮気味に伝えた記憶があるほどです(笑)

強く心を動かされて魅力を感じた下着業界への就職活動ですが、それと同時に日に日に不安な気持ちも募っていきました。それは、就職できないかもしれないという不安ではなく、今は純粋な気持ちで大切に思っているランジェリーを「仕事」にするということに対しての不安でした。仕事にしてしまったら、今のような純粋な気持ちで下着を見ることができないのではないか。仕事である以上は、やりたいと考えていること以外のこともやらなければいけないだろうし、嫌な部分も見えてきてしまうのではないか。まだ就職が決まったわけでもないのに、そんなことが少しずつ気掛かりになっていきました。

さき yoshitake・ランジェリーの奥深さを教えてくれた、2つのこと

今振り返れば、「好き」だけでそれをお仕事にしていく「覚悟」がなかったと感じています。覚悟=どんなことがあってもやり抜くという強い気持ちでしょうか。純粋にランジェリーが大好きという気持ちが、仕事にしてしまうことで、純粋な気持ちでなくなってしまう恐怖心が、覚悟よりも勝ってしまいました。また、大学では下着を専門的に学んだわけでもなく、ただのランジェリー好きな女子であった私には、好きなことを仕事にするのがどういうことなのか、具体的に頭の中でイメージできず、ただランジェリーが大好きという気持ちだけで仕事にしていいのか…という不安が拭いきれなかったことも、ランジェリーの道を選べなかった理由のひとつだったと思います。

そういった背景があって、ランジェリーは仕事ではなく趣味として全力で楽しむと決断した私は、職種ではなく働く環境や条件を軸に就職活動を始めました。そして大学4年生の4月に、化粧品の通販会社に内定をいただくことができました。


卒業制作で学んだランジェリーの奥深さ

こうして無事に就職内定をいただけた私ですが、大学3年生では就職のことを考え始めると同時に、卒業制作の時期も近づいていました。服飾系で衣服の製作ができるゼミに所属していた私は、思い切ってランジェリーの制作に挑戦することを決心しました。大学生の頃から女性の「曲線美」というものにとても魅力を感じ始めていたため、制作のテーマは、「アール・ヌーボー」に決定。曲線を美しく表現したランジェリーの制作に取り掛かりました。

さき yoshitake・ランジェリーの奥深さを教えてくれた、2つのこと

ランジェリーの制作の流れを少しご紹介いたしますと、まず様々な建築などのアート作品からインスピレーションを受け、イメージボードを作成します。その後、立体裁断でパターン(服の設計図)を作成し、生地を染めたり装飾の刺繍を縫ったりしていきます。大学生活では和服・洋服とさまざまな服を作ってきましたが、ランジェリー制作は自分にとって初めてのこと。それまでの授業で学んだ和服・洋服とは違う性質をもつランジェリーの制作は、また一味違いました。

ワイヤーだったり、ゴムの扱い方だったり、いろいろと苦戦もありましたが、何よりも大変だったのは、パーツの多さです。洋服では胸の立体感はダーツなど布を折り込んで作りますが、ブラジャーでは曲線と曲線を縫い合わせて制作します。曲線と曲線との縫い合わせがとにかく難しく、何度も縫い直した記憶があります。さらに、ランジェリーは直接肌に触れるものだからこそ、縫い目が肌に触れないよう縫い目が内側になるよう配慮したり、縫い目を包んで隠したりと、肌触りに気を遣いながら制作を行いました。

さき yoshitake・ランジェリーの奥深さを教えてくれた、2つのこと

何気なく毎日つけているブラジャーやショーツも、実はそういう優しい工夫がたくさん施されていることを、実際に自分の手で作ってみたことで、身をもって知ることができました。テーマ設定から、デザイン、パターン、染色、縫製までの工程を全て自分で行ってみて、「ランジェリーを一着作るのって、こんなにも大変なんだ…」と実感できたことは、今となっては貴重な経験です。ランジェリー作りの大変さを知ってからは、ランジェリーに対する愛情とともに作ってくださった方々に対しての敬意を感じながら見るようになりました。

実際に販売されていているランジェリーも、いくら工場などで分業されているとはいえ、多くの人の手によって本当に細かく作られているものだと思います。プチプラ価格で販売されているブラジャーを見つけると、「どうしてそんなに可愛い価格でできているの?!」と不思議に思ってしまいます。それでもたまに「下着って高いよね」という声を耳にすることもあります。私はそういう方々に対して、ランジェリーのパーツの多さや制作工程の大変さ、多くの人々の手間と想いが合わさって制作されているという事実を、お伝えしていきたいです。

デザイン画から一年半もの時間をかけて、自分の頭の中にイメージされていたものを実現できたときの喜びは、今でも忘れられません。デザインしている時も、パターンを制作している時も、縫製している時も、決して簡単ではなく細かすぎる地道な作業に心が折れそうなった時ももちろんありました。ただ、1からランジェリーを制作してみて、学んだことや気づいたことがとてもたくさんあり、卒業制作で学んだことは今でも活かされています。

さき yoshitake・ランジェリーの奥深さを教えてくれた、2つのこと

化粧品会社で学んだランジェリーの大切さ

卒業制作を無事に終えて大学を卒業した私は、内定をいただいていた化粧品会社に入社し、約1年3ヶ月間そこで働きました。ランジェリーの道を選ばなかった私ですが、化粧品会社での仕事は、愉快な同期や熱いエネルギーを持った素敵な先輩方に囲まれた楽しい日々でした。私の担当業務は、電話でのお問い合わせ窓口で、お客様から「最近肌が綺麗になったって旦那から言われるようになったのよ〜」というようなお声をいただいたり、私宛に直接お電話をくださるお客様もいらっしゃったり、仕事へのやりがいも感じていました。お客様のご年齢は40〜50代が多く、中には80歳近い方もいらっしゃったのですが、何歳になっても美しく綺麗でありたいのが女性なのだと実感しました。「今からでもちょっとは気にした方がいいかなって思って」というお客様の眩しい言葉は、今でも美しく私の耳に残っています。

さき yoshitake・ランジェリーの奥深さを教えてくれた、2つのこと

数は少なかったですが、20代30代の方ともお話しさせていただく機会もありました。「今は軽い悩みだけども、将来のために今のうちからケアしていきたい」という方が多かったです。入社当初は、このようなお客様の美意識の高さに驚きましたが、化粧品会社で働きつづけるうちに、私自身の考え方も変わっていきました。自分の肌も身体も一生物。一生物の自分の身体を大切に扱うという視点に立つと、毎日何気なく付けているランジェリーへの見方も少しずつ変わってきて、ブラジャーは将来のために正しく着けて胸を綺麗なままで守っていきたい、と考えるようになりました。

皆さんもきっとスキンケアはお顔にシミやシワができないように毎日行っていると思います。肌と同じで胸も貴女の大切な一生物の身体です。何歳になっても理想のバストでありたいですよね。だから、胸が垂れないように毎日のランジェリーの着け方や選び方など、普段より少し丁寧にケアをしてあげてください。垂れた胸は戻すことが難しいと言われているため、垂れさせないように今から気をつけることが大切だと私は考えています。若いうちから私がこのような考え方になったのは、化粧品会社で働いた経験のおかげです。

私も、何歳になっても綺麗で美しくいたいです。私たち女性にとって、美しさはパワーの源ですよね。年齢なんて関係なく、私たち女性は一生美しく綺麗でありたいもの。化粧品会社での経験は、それを学ぶことができた貴重な時間でもありました。

さき yoshitake・ランジェリーの奥深さを教えてくれた、2つのこと

たかがランジェリー、されどランジェリー

卒業制作と就職という2つの経験を通じて、私はランジェリーの奥深さを知ることができました。たかがランジェリー、されどランジェリー。少し見方を変えるだけで、普段何気なく着けているランジェリーが愛おしくなります。皆さんにも是非そういう経験をしてもらいたい。今は日々そんな思いでランジェリースタイリストとして活動しています。


次回のコラムでは、私が勤めていた化粧品会社を辞めてランジェリースタイリストになったきっかけとも言える「ランジェリーカレッジ」との出会いについて書かせていただきます。どうぞ引き続きお付き合いください。

各分野で活躍する方々に登場していたたきランジェリーや女性の美、最新の ファッションやコーディネイトに関する情報を発信していただく最新コラムです。

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